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研究と報告
頭部外傷後の神経症症状形成における社会的心理的要因の意義(第1報)/(第2報)
著者: 諏訪望1 森田昭之助1 古屋統1 藤井英生1 川村幸次郎1 本間均1 駒井透1 大和田宏1 石戸政昭1 西堀恭治1 山下格1 小林義康1 村田忠良1 吉田稔1 伊藤嘉弘1 西信博1 吉村洋吉1
所属機関: 1北海道大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.351 - P.366
文献購入ページに移動頭部外傷の後遺症のうちで,多彩な自覚症を有しながら,その裏づけとなる器質的障害,または機能的障害を明確にしえない症例が増加してきていることは,臨床的に直接われわれが経験しているところである。
これらの症状形成の因子に関して,かつては単純な心因論と器質論とが対立したこともあつたが,この両者を截然と区別することはきわめて困難である。したがつて,かかる問題の究明には単に狭義の医学的な立場からだけでなく,社会的要因の意義についても十分な考察が必要と考えられる。とくにわが国においては,第2次大戦後,労働者災害補償保険法(労災法)が施行され,外傷の機会の多い労働者に対する社会補償が,一応形態を整えてはきたが,そのことは反面において,頭部外傷後遺症の症状形成にさらに複雑ないろどりを与えているとも考えられるわけである。
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