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研究と報告
持続睡眠療法に関する1試案—Levomepromazineを中核とする持続睡眠療法
著者: 懸田克躬1 広沢道孝1 山口昭平1 伊藤政秋1 岡部正三1 鎌田祐子1
所属機関: 1順天堂大学医学部精神神経科教室
ページ範囲:P.541 - P.545
文献購入ページに移動薬物を用いて睡眠に導き,これを精神疾患の治療に用いたのは,Griesinger1)が初めとされている。すなわち,1861年,彼は躁病およびうつ病の治療を目的として,クロロホルムによる睡眠療法を行なつた。その後,臭素剤,バルビタール剤の出現によりこの療法は急速に発展したが,1901年にWolf2)はトリオナールを用いて初めて持続的,体系的な睡眠療法を行なつている。これより持続睡眠療法は精神科領域における重要な治療法となつた。その後も1922年にKäsi3)がモルヒネ,ヒオスチンの前処置をほどこしたゾムニフェン法を発表しているほか,パラアルデヒドとスコポラミンの注腸,ルミナール・ナトリウムの皮下注,ジアールの注腸,アベルチンの注腸,そのほか上記薬物の種々なる併用など幾多の方法が考案されてきた。しかし,現在のわが国では下田のスルホナールを主剤とする方法がもつとも広く行なわれていることは熟知のごとくである。最近ではクロールプロマジンを併用して,そのバルビタール酸系の睡眠剤の薬効を増強し,その使用量を節減し,その睡眠を自然の形に近づけようとする動きがみられる。(Azima4))このような考案はクロールプロマジン自体の示す治療効果も考えあわせるとき,おのずからなる趨勢と思われる。クロルプロマジン以外にも多数のフェノチアジン誘導体が発表されているが,とくに傾眠作用の強いものがあれば,この目的のためにはそれこそが適当したものであることは当然であろう。われわれはこの見地からLevomepromazineに着目し,持続睡眠に応用し,予期したような成果をえたので報告しよとう思う。Levomepromazine(7044 RP,以下LMと略記)はlevomethoxy-3(dimethyl-amino-3'methyl-2'propyl)-10 phenothiazineであり,なる化学構造式を有する精神安定剤である。その臨床的効果については,J. Sigwald5)らの報告以来すでに幾多の文献に論ぜられている。
とくに精神興奮症状に対してはChlorpromazineに比肩する効力を有することはすでにひろく認められている。また不安症状の顕著な抑うつ状態に関しては在来の薬物にまさる鎮静効果を示し,その傾眠作用とともに抑うつ性の不眠症状にもあわせて有効なことも知られている。
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