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文献詳細

雑誌文献

精神医学2巻8号

1960年08月発行

文献概要

研究と報告

Nialamideによるうつ状態の治療経験

著者: 林英三郎1 武村信男1 川久保芳彦1 小浜卓司1 小野和雄1 望月晃1

所属機関: 1日本大学神経科

ページ範囲:P.547 - P.553

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 近年,精神科領域における薬物療法が盛んとなつてきているが,うつ状態に対しても1954年ごろから種々の薬物が相ついで登場している。すなわち,Pipradol誘導体(Meratran),Piperidine誘導体(Ritalin),Iminodibenzyl誘導体(Tofranil),2-Dimethylaminoethanol(Recrein)などがそれであり,それぞれstimulantあるいはanti-depressantとして使用された。とくにTofranilの効果はすでに多くの人々によつて認められ,うつ状態の治療に欠くべからざるものとなつている。
 ここに紹介するHydrazine誘導体,Nialamide(Niamide)もanti-depressantとしての作用を有するものであるが,Hydrazine誘導体がうつ状態に有効であるということは,すでに古くから知られている。1950年,A. C. Washburneが抑うつ反応に対するnicotinic acidの大量療法について発表したが,その後Hydrazine誘導体が潜在的にanti-depressantとしての作用を有すること,およびその作用がmono-amine oxidase inhibitorsに起因していることが証明されるようになつた。この間Iproniazid(Marsilid)がうつ病の療法として紹介されたが,副作用とくに肝障害が顕著なために実用に供されるにはいたらなかつた。その後1957年にいたつてIproniazidと同様にHydrazine誘導体に属するNialamideが,やはりanti-depressant activityを有することがわかり,動物実験では,肝中毒作用およびそのほかの副作用のないことが証明され1),臨床的応用が期待される段階にいたつた。Nialamideは,化学名が1-〔21-(benzylcarbarbamyl) ethyl〕2-isonicotinoyl hydrazineであり,その構造式はである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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