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研究と報告
持続睡眠療法の一試案—Doridenを主剤としPhenothiazine誘導体を併用するこころみについて
著者: 矢部徹1
所属機関: 1神経研究所
ページ範囲:P.623 - P.627
文献購入ページに移動 持続睡眠療法は,精神疾患の治療法のうちで,一連のショック療法にさきだつて,その術式も臨床的評価も一応定まつたものであり,いわゆるtranquilizerによる薬物療法が脚光をあびてきたこんにちでも,なおその臨床的価値は適応によつてはきわめてたかいものがある。
本邦では下田(1922)が本療法にSulfonalを導入して以来,こんにちでも一般にはSulfonalが主剤として使用されるのが通例であり,標準的術式として印象づけられている。すでに一般催眠剤としての臨床的価値を失つているSulfonalが,なお本療法の主剤としてわが国で使用されているのは,いうまでもなくその作用の遷延性と蓄積性によるものである。しかし,逆にこの理由のゆえに身体的禁忌条件や一般状態に対する考慮に加えて,薬物の中毒効果の出現に対する危惧と,看護上の負担さらには患者の苦痛などのなみならぬ場合が少くなく,手技上の熟練がとくに必要とされている。一方Sulfonalを主剤とした場合にも,症例によつては,比較的少い用量で必ずしもふかい睡眠ないし酩酊状態にいたらずに十分な効果の認められることもあり,一般に作用の遅い薬物を蓄積させてその効果を期待することは,反面危険をともなうことも少くなく,いたずらに薬物を蓄積させることが必ずしも必要な条件とも思われず,さらに副作用のすくない扱いやすい薬物を主剤とする方向に改善されるべきものと思われる。
本邦では下田(1922)が本療法にSulfonalを導入して以来,こんにちでも一般にはSulfonalが主剤として使用されるのが通例であり,標準的術式として印象づけられている。すでに一般催眠剤としての臨床的価値を失つているSulfonalが,なお本療法の主剤としてわが国で使用されているのは,いうまでもなくその作用の遷延性と蓄積性によるものである。しかし,逆にこの理由のゆえに身体的禁忌条件や一般状態に対する考慮に加えて,薬物の中毒効果の出現に対する危惧と,看護上の負担さらには患者の苦痛などのなみならぬ場合が少くなく,手技上の熟練がとくに必要とされている。一方Sulfonalを主剤とした場合にも,症例によつては,比較的少い用量で必ずしもふかい睡眠ないし酩酊状態にいたらずに十分な効果の認められることもあり,一般に作用の遅い薬物を蓄積させてその効果を期待することは,反面危険をともなうことも少くなく,いたずらに薬物を蓄積させることが必ずしも必要な条件とも思われず,さらに副作用のすくない扱いやすい薬物を主剤とする方向に改善されるべきものと思われる。
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