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文献詳細

雑誌文献

精神医学20巻10号

1978年10月発行

文献概要

研究と報告

両相性うつ病の病前性格と強迫症状

著者: 海老原英彦1

所属機関: 1東京医科大学精神医学教室

ページ範囲:P.1097 - P.1104

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I.はじめに
 この小論は,躁病あるいは躁病相をしばしば繰り返す両相性うつ病の病前性格を把握することを意図している。このようなパターンを示す両相性うつ病の病前性格は,単相性うつ病に比べ,これまで関心をはらわれることが少なかった。しかし最近,藤縄らはこの面への注意を換起し,「マニー親和型」の概念5)を提唱した。このマニー親和型は,メランコリー親和型(Tellenbach, H.)に循環性格が混合した類型として要約されている。
 著者は躁病および両相性うつ病の病前性格のモデルとしてこの類型に注目し,このモデルを念頭におきつつ,これまでの臨床観察によって得られた資料の考察をすすめてきた。その結果,「マニー親和型」の概念を設定するにあたっては,この類型が示す強迫性格や強迫症状等をkey-wordとして検討をすすめることが必要であるとの予備的結論を得た。
 これまでの諸家の臨床観察は,躁病では強迫症状が少ないことや,強迫症状を示すうつ病者は,躁病に転じることが少ないことを明らかにしてきた。このことは,うつ病に強迫症状が出現することがまれでないことや,強迫性格者がうつ病に落ちいることが,珍しくないこととまさに対照的である。このような臨床的な事実から,強迫症状や強迫性格は,躁病の発病やうつ病の躁転に対し抑制的な因子として作用すると仮定することができよう。
 また,かねて指摘されているように,メランコリー親和型と執着性格は,具体的な性格像において,几帳面性,徹底性,良心性など類似の標識を示すことが少なくないが,共通の標識の1つとして強迫性要素をあげることができる。
 この小論は数ある両相性うつ病の病前性格の中で,類似するところの多いメランコリー親和型と執着性格に焦点をしぼり,この類型を病前性格とする両相性うつ病者が,躁病期やうつ病期あるいは発病前に示す強迫症状を中心テーマとしてとらえ,さらにそれをTellenbach流の2つの人問存在のあり方,つまりSein fur andere(自律的に生じた他者献身)とSein fur sich(防衛的な自己本位)をkey-wordとして分析しつつ,「マニー親和型」を考察したものである。
 循環性格と同調性性格については,強迫症状を示した症例が少なかったので,研究結果を参考として呈示するにとどめた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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