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文献詳細

雑誌文献

精神医学20巻11号

1978年11月発行

研究と報告

胎内原爆被爆による精神遅滞—30年後の精神症状

著者: 石川博也1 島崎朗1 原田正純2 南竜一3 藤原紘一3 大山繁3 中村茂代志3

所属機関: 1西条精神病院 2熊本大学体質医学研究所気質学 3熊本大学医学部精神神経医学教室

ページ範囲:P.1179 - P.1187

文献概要

I.はじめに
 外因性精神薄弱(遅滞),脳性小児麻痺の原因として胎内における胎児の脳傷害があげられる。1945年,広島および長崎に原子爆弾が投下され数十万の人々が殺傷されたことは周知のとおりである。その時,胎内にあった胎児もまた放射線傷害を受け,いわゆる"原爆小頭症"あるいは「近距離早期胎内被爆症候群」として報告された1〜12,18)。このことは不幸にして人類が初めて経験したものであったが,その後,1956年胎内メチル水銀中毒(先天性水俣病)14,19〜21),1958年胎内PCB中毒(PCB胎児症)などいずれも人類が初めて経験する集団的胎内傷害がわが国で発生した20,22)。これらの胎内傷害はいずれも予後不良である。一方,新しい経験であるために,十分にその実態は明らかでない。同じような誤ちを繰り返さないためにもわれわれは長期にわたってこれらの症例を追跡し実態を明らかにしなければならないと考えている。とくに,胎内被爆小頭症に関してはすでに30年経過している。初期のすぐれた多数の研究に比較して,その後の詳細な臨床報告は乏しい。われわれは最近4例の臨床症状を観察する機会を得たのでここに報告する。症例は重症2例,中等症2例であるが胎内被爆による障害児の現況の一部を明らかにすることになると思われる。なお,これらの症例はいずれも1967年厚生省小頭症研究班によって「近距離早期胎内被爆症候群」と診断されている症例である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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