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研究と報告
精神症状を呈した風疹脳炎と考えられる1症例
著者: 細見潤1 榎本貞保1 松下兼介1 松本啓1
所属機関: 1鹿児島大学神経精神医学教室
ページ範囲:P.1235 - P.1241
文献購入ページに移動約10年ぶりで起こったこのたびの風疹の流行は1974年春,北九州,山口,横浜などにおける小規模な流行に始まり,1975年春には関東地方を中心にかなりの規模の流行となった。この風疹の流行は同年夏にいったんは下火となったものの,冬から再び勢いをとり戻し,1976年に入ると西日本各地にも広がり,未だかつてないほどの大規模なものに発展した3,21)。そして今年も各地で多数の風疹患者が続出し,ここ当分の間はこの風疹の流行は続きそうな気配をみせている。一般に風疹はリンパ節腫大と発疹を主徴として小児に好発し,予後良好で経過も早い疾患とされている。一方,合併症としては髄膜脳炎,紫斑病,関節炎などが知られているが,いずれも稀なものと考えられてきた。しかしこのたびの風疹の流行の特徴として各報告者たちは,罹患年齢が幅広くなっている点,およびこれらの重篤な合併症をもつ症例が目立っている点などを挙げている3,6,19)。しかしながら現在までに風疹脳炎の精神症状についての詳細な報告はないようである。
このたび精神症状を主訴として当科を受診し,入院後の検索によって風疹脳炎の可能性が極めて高い症例を経験したので,ここに若干の文献的考察を含めて報告する。
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