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特集 精神鑑定
刑事事件における精神鑑定の問題点
著者: 荒川正三郎1
所属機関: 1前名古屋高等裁判所
ページ範囲:P.1299 - P.1311
文献購入ページに移動I.はじめに
刑事事件は,人間を対象とする以上,刑事事件に関与する法律家は,人間そのものに対する洞察と究明を怠ることはできない。とくに,人間の精神状態が生理的であるか病理的であるか,正常であるか異常であるかが問題となる事件に対しては,法律家は,その解決に役立つべき精神医学,臨床神経学を初め,これに関連する身体医学,心理学,社会学などへ十分な知識と理解をもたなくては,適正・妥当な処置を図ることはできない。わたくしは,多年にわたる刑事法廷の経験と部内研修機関の研鑽により,数多くの精神鑑定を必要とした事例にあたって,その問題の複雑さと困難さをますます痛切に味わされ,これと同時に,時代に即応して発展するこれらの学問へ絶えず多大の関心を抱いて近接し,最良と思われた決断とこれに対する反省を続けてきた。以下,わたくしが心労を要した数多くの精神鑑定を必要とした事件を念頭におきながら,精神鑑定の問題点を摘示して,これに関する考察を加えてみたい。
刑事事件は,人間を対象とする以上,刑事事件に関与する法律家は,人間そのものに対する洞察と究明を怠ることはできない。とくに,人間の精神状態が生理的であるか病理的であるか,正常であるか異常であるかが問題となる事件に対しては,法律家は,その解決に役立つべき精神医学,臨床神経学を初め,これに関連する身体医学,心理学,社会学などへ十分な知識と理解をもたなくては,適正・妥当な処置を図ることはできない。わたくしは,多年にわたる刑事法廷の経験と部内研修機関の研鑽により,数多くの精神鑑定を必要とした事例にあたって,その問題の複雑さと困難さをますます痛切に味わされ,これと同時に,時代に即応して発展するこれらの学問へ絶えず多大の関心を抱いて近接し,最良と思われた決断とこれに対する反省を続けてきた。以下,わたくしが心労を要した数多くの精神鑑定を必要とした事件を念頭におきながら,精神鑑定の問題点を摘示して,これに関する考察を加えてみたい。
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