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文献詳細

雑誌文献

精神医学20巻12号

1978年12月発行

特集 精神鑑定

災害—,外傷神経症と損害賠償をめぐる精神医学的諸問題

著者: 原田憲一1

所属機関: 1信州大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.1351 - P.1355

文献概要

Ⅰ.一つの素朴な疑問
 一つの疑問とは次のようなことである:災害や外傷後の神経症状態に対しても,身体的損傷に対してと同様に損害補償があって当然ではないだろうか--という問いである。このことはかつて本誌の巻頭言で書いたことがある(それがおそらく本特集の編者の目にとまっていて,この分野においては甚だ不案内である私に分担執筆の白羽の矢が立ったわけであろう)。
 このような疑問が私に生じてきたのは,次のような臨床の現実における私の苦渋からである。すなわち,日常臨床の場面で神経症的傾向の著しい災害(外傷)後遺症の人から診断書を求められることがある。該当する賠償裁定の公的あるいは私的機関から,治療を担当している医師に対して意見が求められるのである。精神療法的関係にある患者も,自分の主治医に対してその書類を書いてくれるよう希望する。医師はその患者との治療関係を続けようとする限り,それを断わることはできない。そしてそこに苦渋が始まるのである。その苦渋は,「神経症」と診断すれば,補償認定上患者に不利になる場合が多いからである。どうして「神経症」では不利になるのだろうか。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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