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文献詳細

雑誌文献

精神医学20巻5号

1978年05月発行

研究と報告

特異な精神神経学的経過を示した栄養障害の1剖検例

著者: 中邑義継1 柏村皓一1 大田民男1 山田通夫1 吉村育子12 高松茂13

所属機関: 1山口大学医学部神経精神医学教室 2現在:愛知県心身障害者コロニー 3現在:山口県立中央病院神経科

ページ範囲:P.561 - P.568

文献概要

Ⅰ.緒言
 生体は常に栄養を摂取し,体内で新陳代謝を営んで生命を維持している。もしその摂取が不十分であったり,個体の身体的原因によって栄養の吸収利用が妨げられることがあると新陳代謝障害によるいろいろな症状が発現する。たとえば,慢性アルコール中毒者は食餌摂取の不十分,胃腸障害による栄養不足ことにビタミン欠乏を来しやすく,Wernicke脳症,Korsakoff精神病,ペラグラ,索性脊髄疾患などの中枢神経疾患を生ずることがある。これらの疾患は胃切除後にも生ずることがある。
 このたび,われわれはアルコール嗜癖,胃全摘既往の55歳男性で性格変化,痴呆,錐体路症状,せん妄,ミオクローヌス,上肢屈曲下肢伸展位,さらに下痢・発熱を進行性に順次生じて全経過4カ月で死亡した症例の臨床を観察し,さらに脳の病理学的検索の機会を得た。しかし病理学的にはBetz細胞,橋核神経細胞のcentral chromatolysis,大脳・小脳の白質のgliosisを軽度に認めるのみで重篤な臨床経過の割には脳の神経細胞変化は軽微であった。そこでこの症例の臨床経過と脳の組織像を報告するとともに,若干の考察を加える。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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