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古典紹介
—Charles Lasègue—Du délire de persécutions
著者: 高橋徹1 影山任佐2
所属機関: 1国立精神衛生研究所 2東京医科歯科大学犯罪精神医学研究室
ページ範囲:P.575 - P.587
文献購入ページに移動昔から精神病に関しては用いられてきたし,また,幾度となく医学への導入の試みのなされてきたこうした方法は,それに対して十分の注意をしたつもりになっているその時ですら,その支配を受けかねぬほどに執拗なものをもっている。最も狭められた枠に限られているはずの専門研究論文ですら,その影響を免れてはいない。あるひとつの明確な類型を考察するかわりにありとあらゆる狂気の変種のうちからたまたま取り出したひとつのあるいは幾つかの症状ごときに人々は没頭していて,ある研究者は自殺傾向を,他の研究者は盗癖を選ぶという具合で,記憶の錯誤であるとか意志や感覚性の偏りであるとかの研究に閉じこもろうとしたり,幻覚の検査のようなものばかりに没頭しかねない有様である。選ばれる主題はなんであれ用いられる丁続きは同じで,病気の理論を症状へと置き換えるに過ぎない。病理的類型についての科学が手つかずのときに症状論を推し進めてみたところでどうなるのか,皆目見当もつかないのではなかろうか。長所もあるが不完全なこの方法から逃れ,研究にとって最も好ましい最も正確な分類を専門家たちがうちたてようとしたときに,かれらの与えた定義は一層包括的になり,またそれだけ成功を収めてきたのである。妄想を,悟性の全体を関わり合いにするような全体的な妄想と,知性のある側面だけは多少とも無疵のまま残すような部分的妄想とに分けることは,非のうちどころのない驚くほど正確な区別である。ところが,それが細部にわたりはじめて科を属に属を種に,という具合に細分されるようになるにつれて,そうした区分の試みは不満足なものとなってしまった。
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