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文献詳細

雑誌文献

精神医学20巻6号

1978年06月発行

文献概要

研究と報告

分裂病の早期兆候

著者: 清田一民1

所属機関: 1熊本大学医学部精神神経科教室

ページ範囲:P.609 - P.617

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I.はじめに
 KraepelinとLange7)によると,分裂病を含む精神病一般は通常緩徐に始まり,何らの前兆(Vorboten)もなくて突然起こることは非常にまれであり,特に注目すべきは,感情生活の小さな変化が数週から年余にわたって唯一の徴候であることであるという。Bleuler1)は,分裂病の始まりは多くは徐々であり,急性に始まったと思われる場合でも,病歴をよくとると多くはその前にある性格変化または他の分裂病性徴候を見出すものであると述べている。ただし,そのような早期から,直接患者を診察し,極期の症状が現われるまで追跡できる機会はきわめて少ない。したがって,Bumke4)が前兆と呼び,Mayer-Gross10)が前駆症(Prodrome)と称している時点に相当する早期の症状についての研究は少ないのであろう。最近,Gross6)は,前駆症に先行する非特徴的な前兆として前哨症状群(Vorpostensyndrome)を区別している。わが国では村上11),安永13),中井12)らの研究がある。昨今は精神科の外来診療が増加し,かなり早期の分裂病を診る機会が以前よりも多くなっていると思われるが,まだ,前兆ないし前駆期に相当する早期の患者が精神科を訪れる例はあまり多くない。その時点の患者は,医家を訪れようとしないか,または内科,耳鼻科,眼科などを受診し,分裂病以外の疾患として処理されている例がかなり多い。そこで,分裂病の発症の原点を求めて,その「起始過程」を分析した。本論文は,発病からかなり長年月を経た症例の「寛解過程」を追求した別報8)と対照的に企図されたものである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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