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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

てんかん性の機序によると思われるTransient global amnesiaの1例

著者: 鶴紀子12 新里邦夫1 三原忠紘3

所属機関: 1鹿児島大学医学部神経精神医学教室 2現在 宮崎医科大学精神医学教室 3鹿児島大学医学部脳神経外科学教室

ページ範囲:P.655 - P.661

I.はじめに
 Transient global amnesia(以下,TGAと略)の主要な臨床像は,発作的に出現する高度の記銘力障害と逆行性健忘で,発作は通常数時間持続し,発作後発作期間中の健忘を残す。病態生理的には,海馬—間脳系の一過性の選択的機能障害と考えられている。その病因について,FisherとAdamsはてんかん発作と一過性脳虚血発作を有力視したが,てんかん発作については,1回きりの発作が多いこと,逆行性健忘を起こすこと,脳波上明確なてんかん性発作波を欠くことなどから疑問があると述べている8)。その後の報告では,一過性脳虚血発作など脳血管障害とみなされる症例が多く,てんかん性発症とみなされる症例は,Lou, GreeneとBennettの報告のみである11,20)
 今回,われわれは臨床症状からTGAと診断されるが,若年発症で,入院後再発し,発作性に出現した記銘力障害は約1カ月持続し,記銘力障害回復後3カ月間に及ぶ逆行性健忘を残した症例で,深頭蓋針電極を用いた内側頭下導出によって,右内側頭下部(本症例の優位半球)に初発するてんかん性発作波を証明したので報告し,その病因について考察する。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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