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雑誌詳細

文献概要

古典紹介

—J. Capgras et J. Reboul-Lachaux—L'illusion des ((Sosies)) dans un délire systematisé chronique—présentation de malade

著者: 大原貢1

所属機関: 1愛知医科大学精神神経科

ページ範囲:P.759 - P.770

 われわれが呈示しようと思う迫害—誇大妄想患者がわれわれに興味深く思われるのは,彼女には錯覚,あるいはむしろ特異な解釈,つまり一種の個人の同一化の失認が存在することによる。すなわち彼女はほぼ十年このかた彼女の周りの人々やしかも彼女の夫や娘のような彼女により近い人々のいずれをも,種々な,相次ぐ,沢山の双子に変化させているのである。このような錯覚とその病因を分析する前に,われわれは実際には妄想追想によって被われてしまっているその発展の時期を固定することなく妄想全体の中でその妄想を示してみようと思う。
 1918年6月3日,M婦人は彼女の住んでいる区の警察署に,沢山の人達,とりわけ子供達が彼女の家の地下室やパリ中の地下室に不法に監禁されている,と言ってとどけ出たのであった。そして彼女は彼女の述べることが真実であることを確かめ,囚われている人達を救い出すために警官2人が彼女に同行してくれるように頼んだ。彼女は特殊病舎に連れられて行き,翌々日サンタンヌ病院に監置されたのであったが,そこのデュプレ教授は彼女を診察し,彼女が皇族の出身であるとか,彼女の周りの人々が取り替えられているとかいう誇大妄想を伴った空想的主題の慢性の幻覚性,解釈性,想像性精神病におかされていて,習慣性の精神的興奮状態にある,ということを明らかにした。1919年4月7日,M婦人はメゾン・ブランシュに移された。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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