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文献詳細

雑誌文献

精神医学20巻8号

1978年08月発行

研究と報告

高齢に発症したCreutzfeldt-Jakob病の1例—核内封入体が認められた症例

著者: 斎藤惇1 近藤孝子2 長谷川行洋3

所属機関: 1神奈川県立芹香院 2横浜市立大学精神医学教室 3曽我病院

ページ範囲:P.869 - P.876

文献概要

I.はじめに
 Creutzfeldt-Jakob病(以下C-J病と略す)は,初老期の痴呆の1つとして考えられてきたが,栄養障害や中毒など何らかの外因を考えようとする立場がはやくからあり,同じ初老期の痴呆であるAlzheimer病やPick病と同じ範疇に入れることに疑問をいだく人達がはやくからいた1)。1968年のGibbs,Gajdusek2)らの仕事で"transmissible"な疾患であるということが示されて以来,感染性の疾患であろうという考え方が強くなり,第7回国際神経病理学会(1974年)においてもC-J病をInflammatory(Infectious)Diseaseとして扱っている3)。一方,transmissibleであった症例がすべて亜急性海綿様脳症(以下SSEと略す)の病理組織所見を示し古典的C-J病とは異なることなどから,従来から支配的な考え方である古典的C-J病とSSEが同一であるという考え方に批判的な立場をとる人もいる4)。また白木5)は第14回日本神経病理学会における本疾患に関するシンポジアムの中で,古典的C-J病,SSE,thalamic typeなどそれぞれをC-J症候群とみて,各々の原因について検討していくことが必要であろうと述べている。このように従来から病理組織像の性質と臨床像が類似しているこどから,一括してC-J病として扱われてきた亜型についてすべてが同じ原因で発症しているのかとうか未だに疑問が残されているわけで,今後とも詳細な症例の検討がなされていく必要があるように思われる。
 われわれは病理組織学的には視床に強い病変をもち,終脳外套皮質の広範な海綿様状態とエオジン好性の核内封入体が認められ,臨床的には比較的高齢で発症し,Korsakoff症候群をはじめとし興味ある精神症状と視覚異常,運動障害なとを示しながら約2年の経過で死亡したC-J病の1例を経験したのでここに報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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