文献詳細
文献概要
研究と報告
精神分裂病におけるL-Dopaの行動への影響—二重盲検比較試験
著者: 稲永和豊1 中沢洋一1 橘久之1 大島正親1 小鳥居湛1 更井啓介2 木村進匡2 大熊輝雄34 小椋力3 岸本朗3 高橋良5 桜井征彦5 田中正敏6 小川暢也7 伊藤斉8
所属機関: 1久留米大学医学部精神神経科 2広島大学医学部精神神経科 3鳥取大学医学部精神神経科 4東北大学医学部精神医学 5長崎大学医学部精神神経科 6久留米大学医学部薬理学 7愛媛大学医学部薬理学 8慶応義塾大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.877 - P.889
文献購入ページに移動L-Dopaはパーキンソニズムの患者において,その神経症状および精神症状に対して治療効果を持っていることは周知のごとくである。精神症状の面では,L-Dopaによって患者は外界に対して関心を持つようになり,他の人々との接触が増してくる。しかしながらL-Dopaの量がふえてくると,副作用としての精神症状,たとえば激越,攻撃性,妄想様観念,幻覚および錯乱状態がみられることがある3)。精神分裂病におけるL-Dopaの作用は,その使用量によって変化するようである。
Brunoら4)はL-Dopaの2mg/kgを精神分裂病患者に静注して症状の一過性の改善をみている。
稲永ら7〜10)は400〜600mgのL-Dopaが精神分裂病において抗精神病薬と併用して効果があることをみており,特に疎通性の改善と感情面での改善を認めている。
本邦においてはその後相次いで精神分裂病患者に対する少量のL-Dopaの有効性が証明された2,11〜15,17)。以上のopen trialの結果を確認するために,稲永ら10)は二重盲検比較試験を行ない,L-Dopaの有用性を確認した。
ヨーロッパ(デンマーク)においても,Gerlachら5)によって,単一型精神分裂病に対して,抗精神病薬と少量のL-Dopaを併用することによって好ましい効果が確認された。
本研究においては,少量のL-Dopaが精神分裂病患者に対して,有効で安全であることを二重盲検比較試験によってたしかめることが出来た。
掲載誌情報