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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

新抗うつ薬Nomifensineの使用経験

著者: 更井啓介1 児玉久1 野村昭太郎1 石津宏1 天本貴1 瀬川芳久1 曽根喬1 増田勝幸1 石井和彦1 森脇一浩1 中川一広1 山岡信明1 山崎正数1

所属機関: 1広島大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.899 - P.907

I.はじめに
 Nomifensineは西ドイツのヘキスト社によって開発され,図に示すような構造式をもち,従来の三環抗うつ薬と異なるイソキノリン誘導体である1)。薬理学的には動物実験において小量で運動量をやや減じ,大量でその運動量を増し,脳の軽い刺激作用を有するとみられている。また,テトラベナジンやレセルピンの中枢作用に拮抗する点で従来の三環抗うつ薬と類似の作用を有しており2,3),健康人に対しては集中力の増加と反応時間の短縮を来したという4)。なお,覚醒脳波は本剤により速波化し,また末梢の抗コリン作用は従来の三環抗うつ薬より弱い点が特徴とされている3)
 生化学的には生体アミン,ことにカテコールアミン(ノルエピネフリンとドーパミン)の脳におけるシナプトゾームへの取り込みを強く阻害し,セロトニンの取り込みも中等度に阻害し5,6),大量使用で線条体におけるカテコールアミンの代謝回転を増し,in vitroでMAO阻害作用を有し,またc-AMP(各種ホルモンの標的細胞における作用を媒介する)を増加させるとの報告がある7)
 臨床的にはすでにAngstら8)はじめ数編の報告9〜13)がなされており,それによると本剤はイミプラミンと同様の抗うつ作用を有しており,しかも効果発現がやや速く,副作用が少ない点に特徴があるという。
 今回われわれは25例のうつ状態の患者に本剤を用いて若干の経験を得たのでここに報告する。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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