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研究と報告
分裂病家族における感応現象について
著者: 山田通夫1 村田正人2 山本節3
所属機関: 1山口大学医学部神経精神医学教室 2山口日本赤十字病院神経科 3山口よしき病院
ページ範囲:P.951 - P.955
文献購入ページに移動親密な人間関係の場において,たとえば血縁者内で,発端となる患者の強烈な精神症状が,周辺の者を異常な心的世界の中へ巻きこむ形で生じる精神病を感応精神病と呼ぶ。
Lasègue et Falret8)によりfolie à deuxと命名されて以来,欧米では多くの報告がなされている。その間,本症の疾病概念の変遷が見られている。
さて,わが国においては本疾患は少なく,最新の精神医学全書においても「比較的まれな精神医学的症状群」の項にその疾患名があげられているにすぎない10)。
従来の報告例の多くは,迷信的宗教の影響をうけた集団性精神異常状態や祈祷精神病に属するものであった3,11,14)。この種の症例は文化的水準が平均化される過程で,急速に姿を消しつつある。
しかし,はたしてJanzarik5)をしてdas “indizierte Irresein” ist Angelegenheit des Historikers gewordenといわしめるほど,この疾患は過去のものとなってしまったのであろうか。
最近,これまでの感応精神病とは若干趣きを異にしたものが見られるようになったという報告もある13,15)。たとえば,精神病院内でのfolie a deuxの報告例などである16)。
さて,われわれも発生状況やその経過などに興味のある1家族例を経験したので,ここに報告し考察を加えたい。
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