文献詳細
研究と報告
「青年期セネストパチー」について—青年期に好発する異常な確信的体験(第5報)
著者: 渡辺央1 青木勝1 高橋俊彦1 大磯英雄1 村上靖彦2 松本喜和3
所属機関: 1名古屋大学医学部精神医学教室 2国立療養所東尾張病院 3静岡県立病院養心荘
ページ範囲:P.1291 - P.1300
文献概要
すでに諸家9,10,13,14,16,19,21,24,25)によって紹介ずみのDupreとCamusのセネストパチー(Cenesthopathie)は,奇妙な体感異常が病像を支配し単一症候的に経過し他の臨床単位に還元できない特有の症例であって,諸家は確かにそのような一群の存在することを確認している9,10,15,21,24)。そして分裂病性4,5,7,17)か非分裂病性9,15,20〜22)かという疾病論的位置づけこそ未解決のものの,その研究過程において,体感異常を記述現象学的に細密にする5)とか,長期観察例に基づき経過上の特徴を記述する16)とか,体感異常を離人症との関係で把えるとか3,10,16,17),更にはかれらの対人的態度あるいは社会的態度に着目する9,36)とか,体感異常を自我意識障害の観点で把える試み3,13,16〜18,23)とか,発症年齢の相違から体感異常に亜型を区別する試み10,13,17,23),身体の現象学という立場から体感異常を理解しようとする24,25)など種々の試みがなされてきた。
さて,われわれもここ数年来,奇妙な体感異常の訴えを繰り返し,上述の意味でセネストパチーとしか診断のつけようのない病者に重点的に関与してきた。そして彼らが発症年齢において青年期と更年期以後という2つの大きなピークを示し,かつこの発症年齢の違いによってその病像に相当の相違をもつという印象をもつに至った。われわれが今回取り上げようと思うのは,このうちの前者,すなわち青年期に発症する一群である。
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