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特集 妄想
分裂病型妄想の理論的問題点
著者: 安永浩1
所属機関: 1東京大学分院神経精神科
ページ範囲:P.127 - P.137
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「妄想」という言葉は実際上大へん幅ひろく用いられる。「常識に反する」思考は皆妄想,と呼ばれかねないし,話を分裂病領域に限ってさえも,多少とも逸脱した言動の大群,また,自我障害や幻覚の忠実な体験報告に過ぎないものも,皆妄想,と呼ばれてしまうことが多いのである。
これらをいっぺんに論ずることはとてもできないので,本稿ではまず,いわゆる真正妄想echte Wahnideen(Jaspers, K.)1)の型の現象にしぼって考察を行なうことにする。いうまでもなく,これは妄想知覚,妄想着想,妄想気分等の諸形態を含むが,いずれにせよそれ以上の心理的遡及が「不可能」な,疾患過程からの「原発的」なものとみなされた症状で,病的形態としては最も純粋(むしろ単純)と考えられるものである。
「妄想」という言葉は実際上大へん幅ひろく用いられる。「常識に反する」思考は皆妄想,と呼ばれかねないし,話を分裂病領域に限ってさえも,多少とも逸脱した言動の大群,また,自我障害や幻覚の忠実な体験報告に過ぎないものも,皆妄想,と呼ばれてしまうことが多いのである。
これらをいっぺんに論ずることはとてもできないので,本稿ではまず,いわゆる真正妄想echte Wahnideen(Jaspers, K.)1)の型の現象にしぼって考察を行なうことにする。いうまでもなく,これは妄想知覚,妄想着想,妄想気分等の諸形態を含むが,いずれにせよそれ以上の心理的遡及が「不可能」な,疾患過程からの「原発的」なものとみなされた症状で,病的形態としては最も純粋(むしろ単純)と考えられるものである。
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