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研究と報告
一過性にKlüver-Bucy症状群を示した亜急性脳炎の1例
著者: 松島嘉彦1 挾間秀文1 国元憲文1 入江秀樹2
所属機関: 1鳥取大学医学部神経精神医学教室 2鳥取大学医学部脳幹性疾患研究施設神経内科部門
ページ範囲:P.189 - P.198
文献購入ページに移動1937年,KlüverとBucyはサルの海馬,扁桃核を含む両側側頭葉切除によって特異な行動変化が生ずることを報告した。観察された症状は,1)精神盲を思わせる行動様式,2)oral tendencies,3)hypermetamorphosis,4)情動変化,5)性行動の増加,6)摂食行動の変化である15)。この症状群がヒトの両側側頭葉切除例11,19,31)および各種脳器質性疾患6,7,10,20,23,26,30)の際にもまれにみられることから,本症状群の病態をめぐって活発な論議が行なわれるようになったが,精神盲についてはこれを記憶障害によるとする立場をとり,視覚失認に批判的なものもある2,16)。一方van Bogaertら33)は側頭葉に広範な炎症性壊死病巣を有する特異な脳炎例を急性壊死性脳炎(acute necrotzing encephalitis)として報告したが,その後これと亜急性封入体脳炎(subacute inclusion encephalitis)との類似性が指摘され9,17),その病因としてヘルペスウィルスの感染が重視されるようになった14)。
今回われわれは,亜急性脳炎の経過中に一過性にKlüver-Bucy症状群(以下K-B症状群と略す)を示し,その後の検索でヘルペス脳炎あるいは,壊死性脳炎の可能性が推測された長期生存例を経験したので報告する。
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