文献詳細
文献概要
研究と報告
精神病状態を呈した小児全身性エリテマトーデスの2症例
著者: 牧原寛之1 鈴木順子2 高原周治3 大場すま子3
所属機関: 1兵庫医科大学神経精神科 2大津赤十字病院小児科 3兵庫医科大学小児科
ページ範囲:P.277 - P.283
文献購入ページに移動全身性エリテマトーデス(以下SLEと略す)の臨床症状は多彩であり,その中枢神経症状についても19世紀末のKaopsiの最初の報告以来多数の研究がなされてきた20)。しかしながらその多くは15歳以上の成人が対象であり,かつそこで精神神経症状とか中枢神経症状として記載されているものも,けいれんや片麻痺などの神経症状が多く,純粋な精神症状への言及はきわめて乏しい。さらにそこには,Heine, B. E. 11)の指摘するごとく,精神症状と神経症状の混乱もときとして,認められる。また小児の報告例についても,例えば大堂ら3)は1955年から1975年までに本邦で発表された症例は57例としているが,これら多数の報告にも,精神症状の記載はほとんどない。わずかに岩川14)(「少し異常と思われる程拒否的であった」),柚木ら34)(「大精神病様の発作」,「せん妄,幻覚,強迫観念」),小原ら23)(「異常情緒反応」),および上田31)(「軽度の躁状態」)の短い文章を認めるにすぎない。これは1975年の玉井ら30)の報告でも同様である。ただ細井ら13)は,意識障害を主とするループス精神病(ループス精神病ということばは,SLEによる症状精神病について原田9)が命名したものである。以下この意味でこのことばを用いる)と考えられる,小児の1症例を報告している。今回われわれは,軽い抑うつ状態にひき続き,亜昏迷状態および体感幻覚や幻聴などの精神病様体験を呈した小児SLEの2症例を経験したのでここに報告し,若干の考察を加えた。
掲載誌情報