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研究と報告
特異な精神症状が先駆したanorexia nervosaの1例
著者: 山崎正数13 野村昭太郎13 更井啓介1 木村匡進2
所属機関: 1広島大学医学部神経精神医学教室 2木村神経科内科クリニック 3現所属,県立広島病院精神科神経科
ページ範囲:P.285 - P.290
文献購入ページに移動Anorexia nervosaは1689年Morton, R. 1)がphthisis nervosaとして18歳の少女の例を記載したのが最初の学問的論文であり,1877年Gull, W. K. 2)がそのような状態に対しanorexia nervosaという名称を提唱して以来,今日,広く用いられている。しかし,本症の患者の中には,ただanorexiaを呈するだけでなく,逆にhyperexiaないしbulimiaを呈する者もあり,より広くdysorexia nervosaやeating disorder3,4)として本症をとらえようとする研究者もある。一方,本症の疾病学的位置付けは未だ一定した見解は得られておらず,単一疾患としてとらえる者5),神経症の範疇6〜9),心身症10),またより狭義の精神病である躁うつ病11)や精神分裂病12,13)との関係を強調する者など様々であり,症状群としておくのがよさそうである。
このたび,われわれは特異な精神症状が先駆したanorexia nervosaの1例を経験したので,その詳細を報告するとともに,若干の考察を行なう。
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