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研究と報告
入院アルコール中毒者の長期予後
著者: 片岡憲章1 遠藤雅之2
所属機関: 1北海道大学医学部精神医学教室 2市立室蘭総合病院祝津分院
ページ範囲:P.379 - P.386
文献購入ページに移動わが国におけるアルコール中毒の臨床統計学的研究は,秋元の松沢病院における研究が最初であると考えられるが,当時はアルコール中毒者はむしろ稀なものと考えられていたようである。しかし,戦後の経済復興に伴うアルコール飲料消費の増加は,結果的にアルコール中毒者の増加を生ぜしめるに至り,その実態についての報告13〜16)も数多くなされるようになってきた。また,最近アルコール中毒者の治療予後に関する報告10,17〜19,21,22)がみられるようになり,予後に関連する因子として,特に社会的因子の重要性が指摘されている。しかしながら,いずれの報告も比較的短期間の予後調査資料が中心であり,現在なおアルコール中毒者の長期予後については不明であるといっても過言ではないと考えられる。
われわれは,一地方精神病院におけるアルコール中毒者の診療場面において,再入院を繰り返す症例が高度の精神的身体的障害と,さらには社会不適応状態を呈し,悲惨な状況に落込んでいく過程を観察するに及んで,その予後が不良であるという印象を強く抱いている。しかし,一方では入院治療後に当院を退院したままの症例がいかなる転帰をとっているのかという素朴な疑問も抱いている。
そこで,このような疑問を明らかにするために当院へ入院歴を有するアルコール中毒者の実態について既に報告7)を行なっているが,今回は当院入院歴を有する全アルコール中毒者の予後調査を行ない,その横断面的にみた長期予後について主に検討を加えたので報告する。
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