文献詳細
文献概要
特集 創刊20周年記念 第2部
Apathy Syndromeをめぐって
著者: 笠原嘉1 成田善弘1
所属機関: 1名古屋大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.585 - P.591
文献購入ページに移動Ⅰ.まえおき
約十年前から,著者の一人笠原は,青年後期から成人期にかけての男子にみられる「特有の」無気力を精神科医の批判に耐えうるかたちで記述しようと,いささかの努力をはらってきた。現代の社会文化現象とでもいうべきcultural apathyではなく,かなり限定的な特有の病理的無気力の輪廓を呈示しようとしたものである。「大学生にみられる特有の無気力」2),“student apathy”1),「神経症性アパシー」3),「選択的退却反応」4),「退却症」5)などと次々と冠する各称を変えてきたのも,より高度に限定的であろうとしたためである。
さて,記述のための初期的作業は一応昨年の論文5)で目的を達したつもりでいる。大学生対象のcampus psychiatryに発したこの研究は,当然のことながら最初大学生症例の紹介を中心としたが,上記の論文においては高校生例から三十歳台のサラリーマン例までが掲げられた。もはやスチューデント・アパシーと称しにくくなった所以である。また,最初から鑑別上気にしていた分裂病(単純性)との関係が否定できることもそこで述べられた。
約十年前から,著者の一人笠原は,青年後期から成人期にかけての男子にみられる「特有の」無気力を精神科医の批判に耐えうるかたちで記述しようと,いささかの努力をはらってきた。現代の社会文化現象とでもいうべきcultural apathyではなく,かなり限定的な特有の病理的無気力の輪廓を呈示しようとしたものである。「大学生にみられる特有の無気力」2),“student apathy”1),「神経症性アパシー」3),「選択的退却反応」4),「退却症」5)などと次々と冠する各称を変えてきたのも,より高度に限定的であろうとしたためである。
さて,記述のための初期的作業は一応昨年の論文5)で目的を達したつもりでいる。大学生対象のcampus psychiatryに発したこの研究は,当然のことながら最初大学生症例の紹介を中心としたが,上記の論文においては高校生例から三十歳台のサラリーマン例までが掲げられた。もはやスチューデント・アパシーと称しにくくなった所以である。また,最初から鑑別上気にしていた分裂病(単純性)との関係が否定できることもそこで述べられた。
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