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特集 精神分裂病の遺伝因と環境因
High-Risk Study
著者: 大平健1
所属機関: 1東京大学医学部分院神経科
ページ範囲:P.697 - P.704
文献購入ページに移動I.はじめに
精神分裂病の発病に係わる遺伝と環境の二作用の解析において,比較的新しい研究手法にhigh-risk法がある。分裂病に罹りやすいと判断されうる個人とその家族を追跡して調べ,発病に先立つ生物学的な因子および心理的な因子を明らかにしようというものである。より一般的には,疫学においてcohort studyと呼ばれる方法に他ならないが,これには従来のcross-sectional studyやcase-control studyといったretrospectiveな方法に比べて二つの大きな利点がある。生活歴における出来事とその影響とを直接観察しうること,障害発現前後の各種要因を比較しうることがそれだが,精神科領域では,服薬していない状態の観察が可能であるという利点を更に挙げることができる。
歴史的にはD. Sobelが1931年に着手したものが最も古いと思われるが,彼の研究は継続されず,B. Fish(1959)の研究,Mednickら(1962)の研究が実際上古い。現在では,著者の調べた限りでは,18の研究グループが6カ国でhigh-risk法による調査を行なっている。各グループの研究は,riskの概念・基準,調査対象群の規模,年齢構成,追跡期間の長さおよび追跡期間中の調査の内容,対照群の性質などの各項目について各々独自なので,全体を俯瞰するためにはやや多様にすぎる。本稿では,概要がある程度明らかになっている二,三のグループの研究を紹介するが,その前にまずriskの概念を整理しよう。
精神分裂病の発病に係わる遺伝と環境の二作用の解析において,比較的新しい研究手法にhigh-risk法がある。分裂病に罹りやすいと判断されうる個人とその家族を追跡して調べ,発病に先立つ生物学的な因子および心理的な因子を明らかにしようというものである。より一般的には,疫学においてcohort studyと呼ばれる方法に他ならないが,これには従来のcross-sectional studyやcase-control studyといったretrospectiveな方法に比べて二つの大きな利点がある。生活歴における出来事とその影響とを直接観察しうること,障害発現前後の各種要因を比較しうることがそれだが,精神科領域では,服薬していない状態の観察が可能であるという利点を更に挙げることができる。
歴史的にはD. Sobelが1931年に着手したものが最も古いと思われるが,彼の研究は継続されず,B. Fish(1959)の研究,Mednickら(1962)の研究が実際上古い。現在では,著者の調べた限りでは,18の研究グループが6カ国でhigh-risk法による調査を行なっている。各グループの研究は,riskの概念・基準,調査対象群の規模,年齢構成,追跡期間の長さおよび追跡期間中の調査の内容,対照群の性質などの各項目について各々独自なので,全体を俯瞰するためにはやや多様にすぎる。本稿では,概要がある程度明らかになっている二,三のグループの研究を紹介するが,その前にまずriskの概念を整理しよう。
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