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文献詳細

雑誌文献

精神医学21巻7号

1979年07月発行

文献概要

特集 精神分裂病の遺伝因と環境因

精神分裂病のNatural History

著者: 中野幹三1

所属機関: 1東京大学医学部分院神経科

ページ範囲:P.755 - P.761

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I.はじめに
 1964年,生物学者のJ. Huxleyら1)は次のような説を発表した。「精神分裂病は浸透の低い優勢遺伝子が病因と考えられる。あらゆる国を通じて,およそ1%の分裂病の人々がいるが,これは突然変異のみで維持されるにはあまりに高すぎる。この病気のようにはっきりした不利益な遺伝的形質は,補償的になんらかの利益によって均衡が保たれるのでない限り,一集団にこの頻度で存続することはあり得ない」と。彼らの主張の眼目は,分裂病者が適応上の利益を有すると明確に述べたことにあり,分裂病の遺伝子がnegativeなものだけでなくpositiveな作用を生体に及ぼすと考えたことであった。
 分裂病のnatural history論とは,Huxleyらの問題提起をうけて次のような課題を担うものである。分裂病者の生活様式を個体としてではなく,個体群のレベルで,病気という判断にこだわらずむしろ適応上の利益,不利益のバランスという側面からみてゆこうとするものである。このような研究領域はまだ十分な市民権を得ているとはいえず,実証的なデータもそろってはいないが,分裂病の病因論や,治療論に寄与するところは大きいと思われる。以下,いくつかの研究を選んで紹介したい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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