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文献概要
特集 精神分裂病の遺伝因と環境因
比較文化論の立場から
著者: 林憲1
所属機関: 1台湾大学医学院神経精神科
ページ範囲:P.785 - P.789
文献購入ページに移動I.はじめに
分裂病の環境因に関して比較文化論からも多くのことが言われてきたが,まだまだなすべき研究が多く,定説を立てるに至っていない。目下比較文化的および時代比較的に観察された分裂病事象の中で,次の4つのことがらが重要と思われる。まず第1に分裂病罹患頻度と病像の地域文化的差異,その差異をその地域文化の特性に関連づけて病因をさぐろうとする方法にまつわる問題,第2に世界各地で発生した人口移動と文化の流動およびこれらを通して惹起された価値観の混合ないしは磨擦が,如何に分裂病の発生と病像の変化に影響したかを取り上げる見かた,第3は分裂病の経過が慢性化を辿り精神荒廃を起こす特性に関して,各文化間にその予後の良否の差異が発見されているが,その差異を比較文化論で更に追究しなければならないこと,そして第4は分裂病の臨床診断規準が果たして国際間に設置できるものであるのかないのか,もし設置可能なところへゆきつけないのであれば,比較文化論の立場では如何にこの問題に対処すべきなのかという課題である。
分裂病の環境因に関して比較文化論からも多くのことが言われてきたが,まだまだなすべき研究が多く,定説を立てるに至っていない。目下比較文化的および時代比較的に観察された分裂病事象の中で,次の4つのことがらが重要と思われる。まず第1に分裂病罹患頻度と病像の地域文化的差異,その差異をその地域文化の特性に関連づけて病因をさぐろうとする方法にまつわる問題,第2に世界各地で発生した人口移動と文化の流動およびこれらを通して惹起された価値観の混合ないしは磨擦が,如何に分裂病の発生と病像の変化に影響したかを取り上げる見かた,第3は分裂病の経過が慢性化を辿り精神荒廃を起こす特性に関して,各文化間にその予後の良否の差異が発見されているが,その差異を比較文化論で更に追究しなければならないこと,そして第4は分裂病の臨床診断規準が果たして国際間に設置できるものであるのかないのか,もし設置可能なところへゆきつけないのであれば,比較文化論の立場では如何にこの問題に対処すべきなのかという課題である。
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