精神医学21巻9号

1979年09月発行

研究と報告

東京都における緊急措置入院制度に基づく入院者の実態

著者： 雪竹朗¹

所属機関： ¹都立松沢病院

ページ範囲：P.935 - P.943

I．はじめに
　51年11月から行なわれた東京都の緊急措置入院制度（精神衛生法，29条の2）に基づく入院^1）の集中化は，当該病院の松沢病院だけでなく，在京の精神科医療従事者，さらには全国の公立病院のなかでも物議をかもした問題であった。ここではその議論には直接ふれない。松沢病院としては，この集中化を，望ましい精神科医療の発展のための一つの踏み台となることを願って協力してきた。たまたま筆者に緊急措置入院制度の結果入院する男子保護病棟（保護室のみ20床）を担当する機会があったので，その2年間に直接対応した事例を中心に，緊急措置入院制度による入院者の実態を以下にまとめておく。今後の当局の施策や精神科医療従事者の実践にいくらかでも参考になれば幸いである。