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文献概要
研究と報告
伊予の犬神,蛇憑きの精神病理学的研究
著者: 稲田浩1 藤原通済2
所属機関: 1愛媛大学医学部神経精神科学講座 2愛媛県上浮穴郡面河村観光局
ページ範囲:P.971 - P.979
文献購入ページに移動憑依信仰とは,「自分の身に起こった不幸や心身の異常が他者の憎悪に由来するものと考え,また時にはその憎悪している人間や動物の霊魂が自己に乗り移り,自己の体を借りて語り,行動することもある」という考え方である。精神医学的には憑依状態とか人格変換現象とか呼ばれており森田1,2)がそれに類する状態を祈祷性精神病と命名して以来,数多くの研究報告1〜8)がある。しかし,そのほとんどは症例の対象が入院あるいは外来患者であり,その場合にとられる症例あるいは病像は,いわゆる精神病に限定されている。著者らは今回,四国の憑きものの代表である犬神,蛇愚き等について,四国の霊峰石鎚山のふもとにある愛媛県のO村において憑きものに関する研究を地域の中に入って行なった。犬神憑き等の中心症状は人格変換現象であるが,人はその行動を,犬神筋の人の霊的力のせいだと信じ,憑かれた人物を中心に周囲の者,シャーマン,更に憑いたとされる人が集まり,お互いが一種の感応状態を呈し,心理劇ともいえるものが演じられ,精神医学的には一定の特徴的な病像および経過がみられ,明らかに通常の精神病とは区別される。心因としては特殊な社会文化的背景,その中での人間関係,そこでのはけ口のない受動的攻撃的感情が重要な位置を占めている。
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