文献詳細
研究と報告
向精神薬服用中にみられる周期性四肢麻痺
著者: 福井秀明1 池田久男1 佐藤光源1 日笠尚知1 大月三郎1
所属機関: 1岡山大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.981 - P.989
文献概要
周期性四肢麻痺とは,家族性あるいは散発性に,周期的かつ一過性に,主として下腿とくに腓腸筋の緊張および筋肉痛,ついで四肢の脱力から始まり,躯幹筋に及ぶ麻痺症状を呈する症候群である1)。通常は家族性発症で,麻痺発作中の血清カリウム濃度によって低カリウム性,高カリウム性および正カリウム性に分類されている2)。遺伝性,家族性発症以外にも血清カリウム濃度の著しい変化によって,原発性アルドステロン症,甲状腺中毒症,renal tubular acidosis,Bartter症候群などは低カリウム性の四肢麻痺を,無アルドステロン症,副腎皮質機能不全あるいは慢性腎不全などは高カリウム性の四肢麻痺を症候性に呈する2)。
外国では遺伝性ないし家族性発症が約60%と数多いけれども,本邦ではほぼ5%と極めて少ない3)。わが国での周期性四肢麻痺の特徴は低カリウム性で,甲状腺機能亢進を伴っているものがほぼ半数を占め,男女比も20:1と圧倒的に男に多いことである3)。
ところで,向精神薬服用中の患者に周期性四肢麻痺発作が発症することが時折観察される。従来この種の報告はなく,われわれはかかる症例9例を経験したので,今回,その臨床的特徴を報告する。また,周期性四肢麻痺が糖代謝と深く関係していることは周知のことであるが,向精神薬の服用によっても糖代謝異常が出現することもいわれているところで,これらの症例について服用中の薬剤を検討するとともに,50g経口糖負荷試験により耐糖能とインスリン反応を検索したので合わせて報告する。
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