文献詳細
古典紹介
Karl Kahlbaum—Die Katatonie oder das Spannungsirresein—Eine klinische Form psychischer Krankheit
著者: 迎豊1 市川潤1 佐藤時治郎1
所属機関: 1弘前大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.1011 - P.1026
文献概要
この間,精神医学的研究の方向も本質的に変化し,かつ精緻となった。詳細な解剖学的裏付けのない特殊な精神医学的疾患観察がすべて疑いの眼でみられた時もあった。多大の労力を注ぎ,多大の熱意をもって遂行された病理学的・解剖学的諸研究は,広範かつ貴重な資料をもたらしたが,精神疾患の成因やその生体内におけるきわめて多彩かつ本質的な形態の解剖学的基礎については,何一っ基本的見解を産み出さなかった。そこで今や次の見解が次第に一般的となってきた。つまり,初めに臨床病理学の方法に従い疾患例を包括的・臨床的に考察し,その経験的資料を整理,精選せねばならない。詳細な解剖学的検討を加えつつ研究をおし進めるための精神医学的基盤はそのようにして整えられる必要がある。今や,メランコリー,マニーなどについての解剖学的検索はまったくの徒労であることが分った。なぜなら,これらの類型は各々,他の状態類型とさまざまな関連のもとに生じ,それ自体が内的な疾患過程の本質的表現であるとは見做しえないからである。それは,例えば,熱という症状群あるいは水腫という集合現象が特定の器質的疾患にとってその特徴的な本質の表現であるとか,その特殊なありかを示しているとは言えないのとほぼ同じである。
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