icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学22巻1号

1980年01月発行

文献概要

研究と報告

慢性分裂病態における局外性と中心性について—1分裂病者の体験構造を通じて

著者: 渡辺哲夫1

所属機関: 1東京医科歯科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.43 - P.51

文献購入ページに移動
 抄録 破瓜病性発病経過のなかで緊張病性諸症状を示しつつ慢性的な幻覚妄想状態に固定化された1分裂病例を報告し,大森の「立ち現われ論」に依拠して精神病理学的考察を試みた。
 まず,ものごとは空虚な物象化を受けた断片的知覚として,患者に立ち現われる。患者をめぐって常に知覚正面だけが唐突な出現と消滅を反復する。知覚現場の自然な自明性は失われ,非知覚的領域は立ち現われない。患者は,人類に普遍的な大地の思い,経験に則した来歴の思いから疎外され,局外的である。
 さらに,患者の肉体だけが,物象化を受けながらも体感によって充填され続け,知覚現場のなかで最も恒常的に立ち現われている。このことは,知覚正面によって包囲されている患者の中心性をさらに強める。
 それゆえ,この病態は,局外化された中心性と呼ぶことができる。
 なお,以上の病態との関連において,地球や太陽という妄想主題にも検討を加えた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら