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研究と報告
慢性分裂病態における局外性と中心性について—1分裂病者の体験構造を通じて
著者: 渡辺哲夫1
所属機関: 1東京医科歯科大学神経精神医学教室
ページ範囲:P.43 - P.51
文献購入ページに移動まず,ものごとは空虚な物象化を受けた断片的知覚として,患者に立ち現われる。患者をめぐって常に知覚正面だけが唐突な出現と消滅を反復する。知覚現場の自然な自明性は失われ,非知覚的領域は立ち現われない。患者は,人類に普遍的な大地の思い,経験に則した来歴の思いから疎外され,局外的である。
さらに,患者の肉体だけが,物象化を受けながらも体感によって充填され続け,知覚現場のなかで最も恒常的に立ち現われている。このことは,知覚正面によって包囲されている患者の中心性をさらに強める。
それゆえ,この病態は,局外化された中心性と呼ぶことができる。
なお,以上の病態との関連において,地球や太陽という妄想主題にも検討を加えた。
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