文献詳細
研究と報告
文献概要
われわれは,たまたま自殺企図で精神科に入院した38歳の主婦の精神症状の背景にSheehan症状群があることを経験した。11年もの間,身体の虚弱さと精神活動性の低下に悩み抜いたこの症例は,甲状腺と副腎皮質のホルモンの補助療法により,見違えるばかりの回復をとげた。そこで本症例の経過を記載し,Sheehan症状群の精神症状に関する文献を引用して,下垂体機能不全症状群には,精神科医が遭遇し,かつ注目すべき精神症状が存在することを示した。それを臨床的に理解しやすいように3つのテーマに焦点をしぼり考察した。すなわち,①時には昏睡により致命的ともなる意識障害の発作,②産後の精神病の一種でもある急性精神病様症状,③長期にわたる下垂体機能不全によって起こる人格変化,である。精神症状の詳細な観察とその原因の探求が,背後にひそむ身体疾患を見つけ出し,的確な治療に導く場合のあることを本稿で示した。
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