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特集 日本精神医学と松沢病院 都立松沢病院創立百年を記念して
松沢病院の戦後の医療実態
著者: 広田伊蘇夫1
所属機関: 1都立松沢病院
ページ範囲:P.1089 - P.1096
文献購入ページに移動I.はじめに
都立松沢病院百年の歴史が,精神医学・医療に多くの足跡を残したことは否定すべくもない。事象を第2次大戦後に限ってみても,呉秀三にはじまる批判的啓蒙の思想は,絶ゆることなく引きつがれ,1965年の精神衛生法改悪反対運動へと結実したことは,なお強烈な印象としてある。また,院内改革を目指す動きの一環として,1959年には医局有志の手による「これからの精神病院シリーズ」第1号が発刊され,以後11号に及ぶ,主として諸外国の病院改革紹介パンフレットが,世に流布されたことも忘れることはできまい。他方で,本特集で石井・宇野が記すように,研究上の足跡もまた,それなりの評価は当然あってしかるべきものであろう。
ここで私が意図するものは,こうした啓蒙活動,研究活動ではなく,松沢病院の戦後の医療の流れを,資料にもとづいて概観することにある。そして,これにもとついて,いくつかの問題点を指摘してみることにある。私の記すような報告は,戦後において,まず江副・台らによって行なわれており,また蜂矢も昭和30年代に,いくつかの報告を行なっている。
そこで,これらの報告を一応念頭におきながら筆をすすめてみたい。
都立松沢病院百年の歴史が,精神医学・医療に多くの足跡を残したことは否定すべくもない。事象を第2次大戦後に限ってみても,呉秀三にはじまる批判的啓蒙の思想は,絶ゆることなく引きつがれ,1965年の精神衛生法改悪反対運動へと結実したことは,なお強烈な印象としてある。また,院内改革を目指す動きの一環として,1959年には医局有志の手による「これからの精神病院シリーズ」第1号が発刊され,以後11号に及ぶ,主として諸外国の病院改革紹介パンフレットが,世に流布されたことも忘れることはできまい。他方で,本特集で石井・宇野が記すように,研究上の足跡もまた,それなりの評価は当然あってしかるべきものであろう。
ここで私が意図するものは,こうした啓蒙活動,研究活動ではなく,松沢病院の戦後の医療の流れを,資料にもとづいて概観することにある。そして,これにもとついて,いくつかの問題点を指摘してみることにある。私の記すような報告は,戦後において,まず江副・台らによって行なわれており,また蜂矢も昭和30年代に,いくつかの報告を行なっている。
そこで,これらの報告を一応念頭におきながら筆をすすめてみたい。
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