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文献詳細

雑誌文献

精神医学22巻11号

1980年11月発行

特集 Butyrophenone系抗精神病薬の臨床精神薬理学

巻頭言

特集にあたって

著者: 大熊輝雄1

所属機関: 1東北大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.1126 - P.1127

文献概要

 1952年にDelay, J., Deniker,によってchlorpromazineが精神科治療に導入され,これが契機となって各種向精神薬の開発が始められ,精神科薬物療法がしだいに確立されて,精神科医療に画期的な進展がもたらされたことは周知の事実である。すなわち,精神科薬物療法の発達は,精神障害を薬物によってかなり的確に治療できるようにしただけでなく,服薬継続による維持療法によって精神病の再発をかなり防止できるようにした。薬物療法は,第2次大戦後の人権思想のたかまりとあい俟って,作業療法,生活指導の発達,精神病棟の開放化,社会復帰活動,精神科医療体系の確立などを促進するための大きな力となったのである。
 各種の抗精神病薬のうち,とくに精神分裂病にたいする治療薬としては,初期のchlorpromazine,reserpineなどに次いで,まず各種のphenothiazine誘導体が開発された。一般に抗精神病薬の作用には,全般的鎮静効果と抗精神病作用(抗幻覚・妄想作用)とがあるとされているが,phenothiazine誘導体はこれら両方の作用を持っているものの,自律神経遮断による過鎮静,睡眠作用その他の副作用が少なくないという欠点があった。ところが1957年Janssen, P. によって開発されたbutyrophenone誘導体のhaloperidolは,強い抗幻覚・妄想作用を持つが,phenothiazine誘導体に比べると自律神経遮断による過鎮静,睡眠作用などの副作用が少ないため,phenothiazine誘導体と並ぶ代表的抗精神病薬として広く用いられるようになった。またhaloperidolを基点として多くのbutyrophenone系抗精神病薬が開発され,現在ではむしろbutyrophenone誘導体が抗精神病薬の主流を占めるにいたっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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