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文献詳細

雑誌文献

精神医学22巻11号

1980年11月発行

特集 Butyrophenone系抗精神病薬の臨床精神薬理学

神経遮断薬の基礎的薬効機序について—生化学,内分泌学的知見を中心として

著者: 森浩一1 川北幸男1

所属機関: 1大阪市立大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.1135 - P.1143

文献概要

I.はじめに
 神経遮断薬の基本的な作用機序は,主として,①ドーパミン受容体の遮断,②フィードバック・コントロールによるドーパミン代謝回転の促進,③ドーパミン受容体の過感受性形成の3つに要約されるであろう。しかしながら日常の精神科薬物療法で得られる抗精神病作用がこれらの主要機序によって充分に説明されるかどうか。確かに現在広く使われている神経遮断薬は全て強弱の差はあれドーパミン受容体の遮断作用を一様に持っている。しかし,実際には臨床的にみて薬物効果は神経遮断薬の投与開始後数日から数週間後に得られることがよく経験される。血液脳関門透過性や脳内浸透性は神経遮断薬ごとに幾分かの相違はみられるが,それが薬効発現の遅れ,すなわち投薬後から薬効の得られるまでの潜時の全てを説明しえないのではないか。したがって臨床的な薬効とはいくつかの生化学的な過程を経た結果として得られるものであると考えられないであろうか。さらに長期的な観点から考えると,神経遮断薬の長期連続投与はドーパミン受容体の感受性を増大させる。この過感受性形成は治療効果を減じるようであるし,さらに過感受性が代償されなくなると遅発性ジスキネジアを発症させるといわれ薬効上のみならず副作用としても重大な問題となっている。神経遮断薬によるDA受容体の感受性の変化はDAのagonistやantagonistで賦活した時の神経内分泌的な反応を調べることによってその程度を予測できるような研究が報告されるようになって来ており,薬効と受容体の過感受性という視点から神経遮断薬について考えてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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