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特集 Butyrophenone系抗精神病薬の臨床精神薬理学
分裂病の治療と病態生理におけるHaloperidol血中濃度測定の意義
著者: 吉本静志1 松本博隆1 南秀雄1 高橋良1 櫻井征彦2 中原忠彦3
所属機関: 1長崎大学医学部精神神経科 2門司保養院 3道ノ屋病院
ページ範囲:P.1159 - P.1165
文献購入ページに移動精神分裂病に対する薬物療法は,現在広範に用いられ,重要な役割を果たしている。しかし,その投与量・投与方法などは,経験的判断に基づいて行なわれており,科学的根拠に乏しいものである。そこで,薬物の生体内動態を知り,それを応用することは,科学的薬物療法を樹立する上で有用と思われる。そこで著者らは,近年分裂病治療薬として最も頻繁に使用されているhaloperidol(HPL)に注目し,その血中濃度を測定し,これと臨床効果,副作用,更に諸背景との関係を検討した。更に体重当り,同一用量のHPLを正常者と分裂病者の2群に投与し,HPLの血中濃度を比較するとともに,抗精神病薬の脳内ドーパミン(DA)の受容体阻害効果の指標として注目されているprolactin(PRL)の濃度を経時的に測定し,HPLに対する反応の差を比較した。さらに分裂病の病態生理として注目されているアミン仮説のうち,特にDA仮説に着目し,未治療の分裂病患者に対するHPLの治療効果をみたのち,DAの合成酵素tyrosine hydroxylaseの拮抗阻害剤であるα-methyl-para-tyrosine(α-MPT)の分裂病に対する効果を検討する一方,HPL血中濃度,PRL,更に体内のHPLのアミンに対する効果をみるため尿中の各種アミンおよびその代謝物を測定し,分裂病のDA仮説について臨床生化学的検討を加えた。なお,研究対象者および家族にはあらかじめ研究目的と作用・副作用を説明し,同意を得たのち研究を行なった。
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