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雑誌詳細

文献概要

特集 躁うつ病の生物学

抗うつ剤の血中濃度と治療効果

著者: 渡辺昌祐1

所属機関: 1川崎医科大学精神科学教室

ページ範囲:P.1307 - P.1319

I.はじめに
 ここ20年来,抗うつ剤によるうつ病治療は進歩したが,今後解決すべき問題点も次第に浮きぼりにされて来たようにみえる。
 残されている問題点のひとつは,三環抗うつ剤の治療有効率が70〜80%にとどまり,電気ショック療法のそれに及ばないことが明らかにされてきた1)ので,抗うつ剤により,より良い治療効果を得るため,いかにして適応患者を選択し,それに反応するであろう抗うつ剤をいかに選び,いかにして治療効果をある程度の確率で予測するかの問題である。
 第2は,個々の患者に投与した抗うつ剤の至適量をどのように決めるかの問題であろう。
 筆者は,第2の問題である抗うつ剤の至適量を決める問題として,抗うつ剤の血中濃度情報を利用する研究について,血中濃度と治療効果,副作用の相関について概観する。そして,今日の時点で,三環抗うつ剤の血中濃度情報がどの程度,治療に利用できるかをまとめてみたい。
 抗うつ剤,ことに三環抗うつ剤の血中濃度と治療効果の相関を研究した報告は,1962年Hyaduら2)のimipramine研究に始まり,次第に増加して来た。本邦でも谷向3),浅野ら4,5),風祭ら6,7),渡辺ら8,9)の研究報告があり,浅野ら10〜12),高橋ら13)の総説がある。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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