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文献詳細

雑誌文献

精神医学22巻2号

1980年02月発行

特集 向精神薬をめぐる最近の諸問題

精神薬理学からみた精神病の成因論—精神分裂病に対する最近の知見から

著者: 大月三郎1 長尾卓夫1

所属機関: 1岡山大医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.231 - P.238

文献概要

I.はじめに
 向精神薬は中枢神経系に作用して精神状態に一次的影響を及ぼす薬物である。その作用は,神経伝達物質の代謝や受容体の機能に影響を与えることで発現していると考えられる。したがって,薬物の作用機序を調べることによって,薬物の奏効する精神状態における脳の機能状態を,神経伝達機構の面から明らかにしていくことが可能であり,ひいては,精神分裂病や躁うつ病のような原因不明な精神病の成因に迫る手段を提供するであろう。
 向精神薬には,精神障害の治療薬として用いられるものと,精神異常を発現させるものがある。治療薬の分類は代表的な精神状態に対する効果によってなされている。したがって,同じ群に属する薬物に,ある共通した作用特性があるとすればその作用特性は効果を示す精神状態と何らかの密接な関係を持っているに違いない。
 薬物の作用は,行動学的,生理学的,生化学的に調べられている。行動学的,生理学的な薬物の作用は,シナプス後の受容体の機能変化の表現である。特に行動面における薬物の効果はそうである。これに対して,生化学的薬理学では,従来の研究が神経伝達物質の代謝,すなわち,生合成と分解,貯蔵と放出,再とりこみなどへの薬物の影響を調べることが主であったが,最近では,受容体そのものを研究対象とするようになり,1つの神経伝達物質の受容体にも,多種類の受容体が存在することが知られてきた。
 本編では,抗精神病薬の作用機序と,アンフェタミン中毒について,最近の知見を中心として紹介し,精神分裂病の成因論との関係に触れていきたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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