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文献詳細

雑誌文献

精神医学22巻3号

1980年03月発行

文献概要

展望

幼児自閉症の予後

著者: 若林慎一郎1

所属機関: 1名古屋大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.244 - P.260

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I.はじめに
 1799年,パリ郊外の森で,後世,アヴェロンの野生児44)といわれた12歳くらいの野生の少年が発見された。聾唖院の医師Itardは,この少年が聾でないとすれば,なぜ喋れないのであろうか,喋ることができるようになるであろうかと考え,この少年の教育を試みた。5年間の苦心惨胆の挙句,若干の言葉の意味の理解と少数の音の発音ができるようになったに過ぎず,当初,白痴であろうといったPinelの意見が正しかったようで,Itardが予期したように喋ることができるようにはならなかったという(Itardの感覚訓練の意図と方法は,後に,Seguinの感覚および運動機能の訓練を中核とした精神薄弱児の生理学的教育へと継承発展された)。Wing107)やHermelin and O'Connor42)は,この少年は,自閉症が示すほとんどの診断的特徴をもっていたとして,自閉症だったのではないかと考えているようであるが,もしそうであったとしたら,このアヴェロンの野生児のエピソードは,今日の自閉症の予後を,2世紀近い以前に示唆した資料として興味深いものがある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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