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研究と報告
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抄録 病的不安の臨床的研究の一環として「自分が狂うのではないか」という不安体験を取り上げた。対象としたのは男女16例で,診断的には不安神経症からうつ病,境界例,慢性軽症分裂病にわたった。16例から得た比較的確実な知見は,(1)恐れられる「狂気」の意味内容は述べる人によって色々であるが,「自己統制喪失の不安」と要約できること,(2)症状レベルでは離人症状が併存することが多いこと,(3)比較的容易に消失する持続性の短い恐怖であり,それゆえに見逃されやすいこと,(4)これを訴える病人は精神科医療を受けることにことのほかambivalentになる傾向があること,(5)病前性格は平均以上に自己統制の強い几帳面,完全主義的人格であること,以上である。なお,より推論的な問題点として,病的不安には,(1)よくある心気症的な死—恐怖,(2)精神的—死を恐れる狂気恐怖,(3)さらには社会的追放を恐れる社会的恐怖の3つが理想型として考えられることを述べた。
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