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精神分裂病における殺人行為特性に関する一考察—父(母)親殺人2例
著者: 渡辺哲夫12
所属機関: 1東京医科歯科大学神経精神医学教室 2栗田病院
ページ範囲:P.371 - P.378
文献購入ページに移動 抄録 父(母)親を殺害した破瓜型分裂病の2例に目的的行為論の立場から考察を加えた。両例に共通して被毒念慮が認められたが,これだけから行為特性全体を理解することはできない。表面的に見れば,被害者が病者にとって最も身近かな人物であること,殺人行為様式の常軌逸脱,犯行後の後悔の念の欠如などが目立つ。しかし,その背後には,行為の目的性の欠如,行為の意味の重層性の不在,遊戯(自律即他律)的随意性によって規定される単純動作の際限のない連続,変質した随意的単純動作系列と断片的知覚像が回想において突出する事態などの特性が認められた。そして,以上のような行為と回想の特性から,病的な確認癖という現象,個々の単純動作には遊戯的自己所属性こそ伴うが罪責感は伴い得ないこと,殺人行為全体には罪責感はもちろんのこと自己所属性すら伴い得ないこと,さらに,帰責的行為命題が成立しないことなどを論じた。
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