文献詳細
研究と報告
特異な語唖を示した初老期痴呆の1例—純粋語唖との関連において
著者: 小林宏1 山田堅一1 安立真一1 浅岡まさみ2
所属機関: 1名古屋大学医学部精神医学教室 2岐阜精神病院
ページ範囲:P.391 - P.399
文献概要
39歳,抜歯後義歯装着不良とともに発症。51年11月初診。その後も神経症状は乏しく,精神症状が前景で経過,言語は一音も発しなくなり,書字に誤字脱字が多くなり,形体も拙劣となり文章内容も貧困化していった。後には言語了解もやや障害されていったが,その他の精神症状や痴呆化傾向に比しよく保たれていた。中心症状である発言障害についてその発症および経過が心的契機と関連していたこと,いわゆる純粋語唖と考えられること,パーキンソン症状のほかに意欲発動の低下,欠如と関連すると思われる特異な表情障害,身振り障害があること,更に顔面失行と純粋語唖との関連などを述べた。
純粋語唖の症例報告はわが国では3例に過ぎず,その中でも本症例は特異なものであり,従来の純粋語唖と失誘との関連の考察にも寄与するものがあると考えられる症例である。
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