文献詳細
動き
てんかんの精神医学的予後
著者: H. ヘルムヘェン1 高橋良2 中根充文2 大田卓生2
所属機関: 1ベルリン自由大学精神科 2長崎大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.443 - P.454
文献概要
予後は疾病の経過と転帰を予知するものとして定義される。長期にわたる病気の場合の個人の障害を考えてみると,慢性のてんかんにとって予後とは,てんかん発作の持続や停止といったてんかんそのものの経過を単に考慮できるだけでなく,その患者個人の生活のあり方や人生の幸,不幸に及ぼすてんかんの影響も予知できなければならないことはすぐに明らかになるであろう。そうした予後のための必要条件は次のようなものである。
1.病気の「自然」経過とその経過を決定する因子,特に予防的,治療的な影響の程度についての知識。
2.疾病の経過を予知するための信頼できる有用な「予知因子」。
3.これらの予知因子は生活や人生の運,不運の状態についての客観的な「指標」により究極的に確認されることである。
こうした指標は,例えば学校教育の水準,職業(おそらくその職種,就業期間,雇用の安定性などから明確にされる),収入,住宅事情(例えば単身,同居,施設内生活など),個人の状況や結婚状況,および運転免許や非行歴の有無を含む疫学的・社会的データであり,また自尊心とか独立して生きていこうとする動機のような(若干客観化し難い)心理学的データなどであろう。
このような指標は,個人の心理学的健全さにより実質的に左右されたり,あるいはむしろ精神疾患によって好ましくない影響をうけることは明らかであろう。それ故,この話題に関して,次の2つの問いが精神科医に対して提出される。すなわち,
1.てんかんは,その患者の心理学的・精神的発達や精神的健康にどの程度影響するのか。
2.他方,精神障害はてんかんの経過にどの程度影響するのか。
掲載誌情報