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特集 睡眠研究—最近の進歩
生体リズムとしてみたヒトの睡眠
著者: 遠藤四郎1 福田秀樹2
所属機関: 1東京都精神医学総合研究所精神生理研究室 2日本大学文理学部心理学研究室
ページ範囲:P.466 - P.476
文献購入ページに移動ヒトの成人は夜暗くなると眠りにつき,朝明るくなると目覚め活動する生活を繰り返している。この睡眠-覚醒リズムは,数多くの生体リズムの中でも代表的なものである。この睡眠-覚醒リズムを変化させること―例えば夜勤後の昼の睡眠や時差のあるところでの睡眠―は容易なことではない。また,1日1回の睡眠ではなく,2日に1回の睡眠(infradian rhythm)や,1日に何回かの睡眠(ultradian rhythm)をさせるようにcircadian rhythmとしての睡眠-覚醒リズムをくずすと,心身の機能が低下してくる。Kleitman38)(1963)は,1日28時間の生活リズムで洞窟で生活したところ,この生活リズムに同調できず,覚醒時に眠くて仕方がなく,食事時間に食べられないことを報告している。生体リズムとしての心身の機能には,その機能が最大限に発揮され,最大値を示す時刻がある。例えば,体温は早朝に最低値を示し,午後から夕刻にかけて最大値を示す。このように100以上の生体機能は,その最大値を示す時刻がそれぞれ異なっており,その間にある関連をもっているが,昼夜逆転した生活では生理機能の間に非同期を起こす。この際には,通常最も能率のあがる時間に疲労を感ずることが起きる。
睡眠-覚醒リズムは,あたかも24時間の明-暗に一致して起こっているようであるが,時間の手がかり(Zeitgeber,time cue)を除くと,ヒトの睡眠-覚醒リズムはフリーランを起こし,1日が25時間前後になり,必ずしも正しく24時間ではない。したがって,生体時計のoscillatorは,time cueに同調し(entrain),体外時間と同調している。一方フリーランの条件下で,体温は25時間前後の生体リズムを起こすのに,睡眠-覚醒リズムが33時間といったものもあるなど,生体リズム間に内的非同期のあることも明らかになり,ヒトではmultioscillator systemが推定されている。このような生体リズムと睡眠の関係について,circadian rhythmとしての睡眠-覚醒リズム,REM睡眠の日周リズム,ultradian rhythmとしてのNREM-REM睡眠からなる睡眠内周期(intra sleep cycle),外部時計と非同期時の睡眠,生体リズムとしての睡眠の最近の研究,臨床との関連について,以下で検討を加えていくことにする。
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