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文献詳細

雑誌文献

精神医学22巻5号

1980年05月発行

特集 睡眠研究—最近の進歩

仏教経典における夢と睡眠

著者: 藤吉慈海1

所属機関: 1花園大学

ページ範囲:P.561 - P.566

文献概要

 仏教の経典の中には夢について書かれている例は多いが,夢とは夢みている状態すなわちパーリ語のsupinanta,梵語のsvapnaの意である。夢の中で見た対象は実際には存在しないから,唯識学派では,対象の非存在visaya-abhāvaの譬喩として夢が用いられる。「唯識無境」などと言って,外界の享受は実体的なものであり得ないから,夢にたとえられる。また「夢・幻・空華」などと言って,夢は幻や空華(眼病のために見える幻影の花)などの錯覚とともに,実体性のないもののたとえとして用いられる。また「夢幻泡影の如し」と言って,夢は幻や水泡や影法師のように実体性のない,はかないもののたとえとして用いられている。また「夢定」と言って夢の中で見たものが,精神の安定した禅定中に見たものと似ているので,夢と禅定とは対比的に用いられることもある。
 要するに仏教では,夢(パーリ語spina,梵語svapna,チベット語rmi-lam)は睡眠中において心と心のはたらきが,その対境に応じて種々のことを見ることである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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