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研究と報告
文献概要
抄録 臨床的に肝脳疾患特殊型(猪瀬型)と診断された2例にみられた巣症状を報告した。症例1は57歳の男性で,軽い意識混濁発作時に着衣失行,ゲルストマン症候群,構成失行などがみられ,かつ発作毎に巣症状の消褪に一定のパターンが認められた。症例2は48歳の女性で,意識清明時にも軽度の構成失行が持続していた。特殊型における巣症状の文献的検討を行ない,いずれも頭頂後頭葉領域の巣症状であり,かつ一過性の場合が多いことを指摘した。そして特殊型にみられる巣症状は,いわば脳局所性の機能低下症状(Landoltの障害症状群)ととらえられることを述べ,意識障害と巣症状の問題や,巣症状出現因子としての血中アンモニアや肝不全因子に基づく二次的な血行力学的循環障害の関与などについて,若干の考察を行なった。また,巣症状が前景に立つ特殊型例は脳腫瘍や脳血管障害と誤診される危険性を述べた。
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