研究と報告
慢性アルコール中毒患者62剖検例の臨床・病理学的検討
著者:
石井惟友1
西原康雄2
堀江昭夫1
所属機関:
1産業医科大学第1病理学教室
2鞍手共立病院
ページ範囲:P.639 - P.646
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抄録 1病院で11年6カ月間に686名(実数391名)の慢性アルコール中毒患者の入院があり,69名が死亡した。そのうち62例は剖検されており,これらを臨床症状・経過より,Ⅰ.アルコール依存群,Ⅱ.精神障害群,Ⅲ.身体障害群の3群に分け,臨床・病理学的検討を行なった。Ⅱ群では高率にペラグラ所見が認められ,アルコール性小脳変性症(2例),central pontine myelinolysis(1例),末梢神経炎(5例)の合併もみられたが肝病変は軽度のものが多かった。脳室拡大,脳回萎縮の所見もⅡ群により著明であった。62例中肝疾患(肝硬変,脂肪肝など)が35例,慢性萎縮性胃炎が10例,慢性膵炎が2例,硬膜下血腫が5例に認められた。剖検上の直接死因は呼吸器疾患24例,肝疾患10例,脳出血6例,硬膜下血腫5例,腹膜炎4例,自殺3例,心不全3例,食道癌2例,事故2例,その他3例であった。死亡時平均年齢は53.3歳で,一般人口に比べ短命であった。