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特集 Brain Function Testへのアプローチ
神経内科の立場から
著者: 志田堅四郎1
所属機関: 1大牟田労災病院
ページ範囲:P.685 - P.693
文献購入ページに移動I.はじめに
神経内科で,大脳の機能,失語・失行・失認の検査を行なう目的はいうまでもなく,大脳半球傷害の部位と拡がり,その重症度を知った上で,疾病の原因を推定し,治療を行ない,その経過と予後を判定するための資料を得ることにほかならない。したがって,神経心理学的障害の構造のみではなく,解剖学的傷害の部位の判定にも役立つものでなくてはならない。更にルーチンの神経学的検査のみでは発見し得ないような,しかも単に機能的ではない,明らかな器質的なsubclinicalな軽症例の発見にも役立つ必要もある。
九州大学神経内科の過去6年間の入院患者総数1,250例中,機能障害を除いた大脳半球器質傷害例は232例で,そのうち失語・失行・失認を有するものは53例であった(表1)。そのうち失行・失認のみに限れば,発見されたものは39例(17%)に過ぎない。疾病別にみれば中毒性疾患にその頻度が高いことが注目される。しかし単にびまん性傷害のみがその理由とすれば変性疾患にもう少し頻度が高くてもよいかも知れない。もちろん疾患の特異性もあろうし,感覚・運動障害があった場合にはそれ以上検査をする必要がなかったこともあろうかと思われる。更にテストを行なうときの技術的問題をも含んでいるものと考えられる。このデータを集計するに当たって,実際的な面で感じたいくつかの間題がある。
先ず第一に病棟に予め準備されてある複雑なテスト・バッテリーはほとんど利用されていない。ルーチンの診察以外に予め準備した道具が必要な項目の検査が特に行なわれていない。またこれらの症状に対する検査の認識不足も問題となる。その他の神経精神医学的症状との区別,たとえば特に了解障害と観念運動失行の区別が明確でないということもあり得ると思われる。したがって神経内科においても是非とも利用度の高い実際的なBrain Function Testを作成する必要は極めて高いものと思われる。
神経内科で,大脳の機能,失語・失行・失認の検査を行なう目的はいうまでもなく,大脳半球傷害の部位と拡がり,その重症度を知った上で,疾病の原因を推定し,治療を行ない,その経過と予後を判定するための資料を得ることにほかならない。したがって,神経心理学的障害の構造のみではなく,解剖学的傷害の部位の判定にも役立つものでなくてはならない。更にルーチンの神経学的検査のみでは発見し得ないような,しかも単に機能的ではない,明らかな器質的なsubclinicalな軽症例の発見にも役立つ必要もある。
九州大学神経内科の過去6年間の入院患者総数1,250例中,機能障害を除いた大脳半球器質傷害例は232例で,そのうち失語・失行・失認を有するものは53例であった(表1)。そのうち失行・失認のみに限れば,発見されたものは39例(17%)に過ぎない。疾病別にみれば中毒性疾患にその頻度が高いことが注目される。しかし単にびまん性傷害のみがその理由とすれば変性疾患にもう少し頻度が高くてもよいかも知れない。もちろん疾患の特異性もあろうし,感覚・運動障害があった場合にはそれ以上検査をする必要がなかったこともあろうかと思われる。更にテストを行なうときの技術的問題をも含んでいるものと考えられる。このデータを集計するに当たって,実際的な面で感じたいくつかの間題がある。
先ず第一に病棟に予め準備されてある複雑なテスト・バッテリーはほとんど利用されていない。ルーチンの診察以外に予め準備した道具が必要な項目の検査が特に行なわれていない。またこれらの症状に対する検査の認識不足も問題となる。その他の神経精神医学的症状との区別,たとえば特に了解障害と観念運動失行の区別が明確でないということもあり得ると思われる。したがって神経内科においても是非とも利用度の高い実際的なBrain Function Testを作成する必要は極めて高いものと思われる。
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